川田工業、「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」の施工【夢のプロジェクトを現場で支えた人と技術】

『機動戦士ガンダム』40周年プロジェクトの一環として、「ガンダムGLOBAL CHALLENGE」(以下GGC)が発足され、18mの実物大ガンダムを動かす夢を実現する「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA(以下GFY)」が2020年12月にオープンした。 このプロジェクトで、「動くガンダム」のメンテナンスが行える格納庫「GUNDAM-DOCK」と大迫力の特別観覧デッキ「GUNDAM-DOCK TOWER」、展示施設やカフェなどが入った「GUNDAM-LAB」の3施設をはじめ、施設敷地内全ての建物と施設全体の設計・施工を担当したのが川田工業だ。 現場所長を務めた、草壁所長と、営業担当の長谷川部長に話を聞く。
(所属・役職は工事期間当時)
「次の現場はガンダムだ」
草壁所長が今回のGFYプロジェクトの総括工事長に就くと言い渡されたのは、着工のわずか1ヶ月ほど前のこと。小学生の頃からガンダムファンであった草壁所長は「次の現場はガンダムだ」と言われても「ホワイトベースでも作るのか?」とピンとこなかった。しかし、すぐにこのプロジェクトの壮大さを実感することになる。
イメージを現実に ~「GUNDAM-DOCK」の計画・設計~
これまで各地で展示されてきた実物大ガンダムとは異なり、今回のガンダムは、動く。効果的に「動くガンダム」を見せるには、メンテナンスも実施できるデッキが必要になった。そこで計画されたのが「GUNDAM-DOCK」。「GUNDAM-DOCK」は、GFYプロジェクトのテクニカルディレクターである石井啓範氏が、NASAのスペースシャトルの格納庫をイメージして計画したものだった。そのため、当初は全面囲いがあり、伽藍洞(がらんどう)で中にスペースシャトルならぬ「動くガンダム」がすっぽり入る建物を実現する方向で計画が進められた。
草壁所長
「事務局サイドが描くイメージを、当社で実施図に落とし込んでいく。図面をおこす過程で、「GUNDAM-CARRIER」が走る部分の柱はどうするのか、この場所に点検通路を設置するのは無理ではないか、といった構造的に厳しいと思われる課題に直面し、必要最小限な構造に変化していきました。点検通路をワイヤーで吊る『吊り構造』も当社から提案しました」
このような経緯を経て、「GUNDAM-DOCK」は現在のような形状にたどり着いた。

システム建築と一般建築の融合 ~「GUNDAM-DOCK」の施工~
建築工事では階層ごとに柱を立てて梁でつなげて安定させてから上の階層の柱を立てるのが通常の工法だが、「GUNDAM-DOCK」の場合、「動くガンダム」を格納する部分には梁がかけられないため、どう安定させるかが課題だった。

草壁所長
「そこで、2階層分の柱を予め地組みしておいて1本の長い柱とし、それらを一気に立たせて「動くガンダム」頭部より高い部分で梁をかけ、まず安定性の確保を図りました。2本の柱を1本の長い柱にして立てるのは初めてで、難しい作業でしたが、入念な計画のもと安全に作業が進み、着工4日目にして梁の組立てまでが完了しました」
「GUNDAM-DOCK」はいわゆる「一般建築」と言われる領域だが、「システム建築」で得たノウハウと経験値が活かされ、巨大な無柱空間を実現できたと言える。
現場職員200名を統率する秘訣は?
現場で働く職人は、ピーク時には200名を超えた。この人数を統率するために、現場所長に必要なものは何か聞いてみると、こんな答えが返ってきた。
草壁所長
「『決断力』『指導力』そして『勇気』です。たとえば、進捗させたい時期でも悪天候であれば引かなければならない時がある。品質面や安全面に不安が残れば当然後工程に響いてくるので、引くときには引く勇気、それを決断する力と、その決断を説得する指導力が求められます」
押す勇気ではなく、引く勇気。ビッグプロジェクトの現場を指揮する立場として、ふ頭ならではの厳しい風速規制などと向き合いながら皆をけん引した。

着工した2019年は記録的な大型台風に襲われた年でした。GFYの現場でも、建てたばかりの現場事務所の窓が全部吹き飛んで、まるまる建て直す災難に見舞われましたが、まだ本格的な着工の前で施設に被害が無かったのが不幸中の幸いでした。
未知の領域 「GUNDAM-DOCK」の難題に挑む
「GUNDAM-DOCK」では実際に「動くガンダム」のメンテナンスが行われる。24ヶ所の軸(関節)は必ずチェックし、配線の確認や搬送台車の油差しに至るまで、作業は実に様々だ。そのため、点検通路は「動くガンダム」からわずか50cmの位置に設置する。


草壁所長
「さらに、点検用のスペース確保のため、点検時のみ使用する可動式の延長デッキを製作するなど、これまで経験したことのない諸条件をクリアする必要があって頭を悩ませました」
長谷川部長
「事務局からは、干渉する部分などを3D CADにて高精度で割り出した上で、1cm単位の細かい指示がありました」
また、機械系の取り扱いを伴う上で不慣れな点も多く、他社との連携がより一層求められた。「GUNDAM-DOCK」正面の開閉式可動デッキ部分などは機械で動くため、本体と機械を取付けるベースプレートを0.3ミリ以下に平滑にするといった、かなり厳しい精度が求められ、加工会社の選定にも苦慮した。結果、機械の部分の軸とデッキの部分とを2社に分けて実施する策を講じた。
経験とは、技術だけではなく"ひととのつき合い"
そうした中で、経験値を活かせたのは、「ひととのつき合い」に尽きる、と語る。
草壁所長
「協力会社との連携は不可欠。あらゆる局面で自分がこれまでどのように人と関わってきたかが問われているように思います。企業や人、それぞれ何が得意かといったポテンシャルなど、コミュニケーションから把握できることが多い。それを引き出すのもまた、コミュニケーションです」
長谷川部長
「確かに、現場では技術よりも人。職人から『こんなことできない』と言われたらおしまいです。いかに相手の懐に飛び込めるか。経験値とは、それにかかる年数なのではないでしょうか。最近の若手は、おとなしい子が多く、相手に深く立ち入らない印象があります」
システム建築のノウハウ集結 ~「GUNDAM-LAB」の施工~
「GUNDAM-DOCK」と並行して建築が進められたのが「GUNDAM-LAB」だ。最適な部材を選んでプラモデルのように組み合わせることで、短納期・低コストを実現する「システム建築」のノウハウが活かされている。川田工業ではこのシステム建築を、日本の気候や風土に合わせて改良した「KBS(Kawada Building System)」を独自開発しており、これまでに倉庫や工場、航空機格納庫など、多くの実績がある。

「GUNDAM-LAB」
草壁所長
「実は、来場された方々に見ていただきたいこだわりポイントがあるとしたら「GUNDAM-LAB」なんです。天井割や化粧パネル割など、現場でしかこだわれない部分がたくさん詰まっています。「GUNDAM-DOCK TOWER(観覧デッキ)」のガラスの手すりなども、安全面と機能性を考えてガラス間にポリカーボネイトで塞ぎを入れるなど現場のアイデアがありますし、耐火塗装の美しい仕上げの部分などは注目して欲しいポイントです」
GFYプロジェクトでやりがいを感じた時
お二人に、今回のプロジェクトでやりがいを感じた時について伺った。
草壁所長
「やはり、評価されたとき、喜んでもらえたときですね。富野由悠季監督やGGC代表理事の宮河氏が現場視察に訪れた際の『わー、すげーなー』のひとことで、もう、やっててよかったなぁ、と思いました」
長谷川部長
「話題性の高い物件なので、携わる人が多種多様で、いろいろな人とさまざまな話ができるのが面白い。皆さんが自分を頼って相談してくれて、それを共有しながら進めていくことに充実感があります」

このプロジェクト自体が前人未到のプロジェクトだったので、当初は参画に反対する人もいましたが、当社にはもともと『日本初』や『世界初』への挑戦を歓迎する気質があったので、ここまで来ることができました。
ぜひ「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」にお越しください

以上、施工現場での様子などをほんの一部だが紹介した。これを読んで現地に行けば、感慨もひとしおだろう。ぜひ、その目で「動くガンダム」を確かめて欲しい。
「GUNDAM FACTORY YOKOHAMA」
会期 | 2020年12月19日(土)~2022年3月31日(木)(予定) |
時間 | 10:00~21:00 (20時最終入場) |
場所 | 横浜・山下ふ頭 |
アクセス | みなとみらい線「元町・中華街駅」より徒歩7分 |
横浜市営連節バス BAYSIDE BLUEバス停「山下ふ頭」下車徒歩3分 | |
公式サイト | https://gundam-factory.net/ |
※最新の営業情報は公式サイトでご確認ください

Interviewees
川田工業株式会社 建築事業部 工事部 工事課 工事長 草壁 大作
入社以来、工事部に勤続。35歳で初めて現場所長を経験。『機動戦士ガンダム』には小学5年生頃の再放送でハマり、ガンプラ歴も長いが、「今回はさすがにガンプラのようにはいかなかった」と語る。
川田工業株式会社 建築事業部 建築営業部 部長 長谷川春信
草壁所長とは同期入社の「ガンダム世代」。工事部で現場所長経験を経て、2010年に営業部へ。技術営業として活躍。
工事概要
工 事 名: | GFYプロジェクト新築工事 (GUNDAM FACTORY YOKOHAMA) | ||
工 事 場 所: | 横浜市中区山下町279-25 山下ふ頭内 | ||
発 注 者: | 一般社団法人ガンダムGLOBAL CHALLENGE | ||
株式会社バンダイナムコホールディングス | |||
株式会社EVolving G | |||
工 期: | 2019年5月9日~2020年3月16日 | ||
工 事 内 容: | 主 要 用 途: | 展示場 | |
敷 地 面 積: | 9,000㎡ | ||
建 築 面 積: | 1,633.85㎡ | ||
延 床 面 積: | 2,370.26㎡ | ||
最 高 高 さ: | 10.3m(GUNDAM-LAB)、25.06m(GUNDAM-DOCK) | ||
構 造 規 模: | S造 | 地上2階(GUNDAM-LAB) | |
地上3階(GUNDAM-DOCK TOWER) | |||
地上6階(GUNDAM-DOCK) | |||
営 業 担 当: | 川田 太郎 | 事業企画部 部長 | |
長谷川 春信 | 建築事業部 営業部 部長 | ||
設 計 担 当: | 櫻井 康裕 | 建築事業部 設計部 次長 | |
岡田 広司 | 建築事業部 設計部設計二課 係長 | ||
現場代理人: | 草壁 大作 | 建築事業部 工事部工事課 工事長 | |
施 工 担 当: | 桑原 明夫 | 建築事業部 工事部工事課 工事長 | |
柴宮 悠弥 | 建築事業部 工事部工事課 | ||
高橋 亮介 | 建築事業部 工事部工事課 | ||
伊豫 功記 | 建築事業部 工事部工事課 | ||
(応援) | |||
田沢 一康 | 建築事業部 工事部工事課 工事長 | ||
相薗 伸治 | 建築事業部 工事部工事課 主任 | ||
設 備 担 当: | 上坂 重明 | 建築事業部 設計部設計三課 |
(所属・役職は工事期間当時)
<関連するSDGs目標>



関連コンテンツ
事業に関するお問い合わせ、企業・IR情報に関するご質問はこちらより承っております。