TCFD提言に基づく情報開示

TCFD提言に基づく情報開示

最終更新:2024年6月11日

私たちKTI川田グループは、グループ理念である『安心で快適な⽣活環境の創造』のもと、グループ各社が展開する事業戦略と⼀体化したサステナビリティ課題への取り組みを推進しています。そしてまた『⼋⽅よし』(※)の精神に則り、すべてのステークホルダーとの対話や共創を通じて、「持続可能な社会の実現」と「グループの持続的な成長」を目指しています。

国際連合「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」は、産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑えられない場合、異常気象や生物多様性の損失などのリスクが大きく高まると警鐘を鳴らし、その実現のためには温室効果ガス排出量を2035年に2019年比で60%減らす必要があると提言しています。当社グループは、重要課題(マテリアリティ)として「地球環境への貢献」を掲げ、その重点課題として「気候変動問題への積極的な貢献」を設定しています。地球温暖化を含む気候変動問題は、当社グループのステークホルダーを含めて、この地球に暮らす全ての人びとにとって、喫緊の課題となっています。

2023年6月、当社グループは、TCFD(※)提言への賛同を表明し、気候変動問題への取り組みとTCFDの提言に沿った情報開示を進めるとともに、気候変動に関するリスク・機会に適切に対応し、「カーボンニュートラル社会の実現」と「中長期的な企業価値の向上」を目指しています。

  • 「八方よし」とは、近江商人の心得と言われる「三方良し」を独自さらに拡張しステークホルダー全てに利をもたらす企業グループを目指すという考え方です。
  • TCFDとは、「気候変動関連財務情報開示タスクフォース(Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」の略称で、G20財務大臣・中央銀行総裁会議の要請を受け、2015年12月に金融安定理事会(FSB)により、気候関連問題に関する情報開示及び気候変動への金融機関の対応を検討するために設立されました。TCFDは、気候関連問題を適切に評価できるような一貫性、比較可能性、信頼性、明確性をもつ、効率的な情報開示を促す提言を策定することを目指して議論を重ね、2017年6月にTCFD提言を公表しました。

ガバナンス

取締役会の諮問機関として、サステナビリティ推進委員会を設置しています。委員長は取締役であるサステナビリティ推進室長が務め、取締役会が選任する委員で構成されます。委員会は原則として毎月開催され、同委員会の下部組織として当社グループ各社の総務部長等をメンバーとしたサステナビリティ推進会議、さらにその下部組織として当社グループ各社のサステナビリティ推進委員会が存在します。これらの委員会への指示・諮問に対する報告・答申に基づき、気候変動を含む幅広いサステナビリティ課題について、その相互関連性などを含めたリスクや機会を議論し、対応策を検討し、定期的または必要に応じて取締役会に報告・答申を行います。

取締役会は重要な方針や課題についての審議・決定を行い、その後、サステナビリティに関するさまざまな活動の内容や進捗状況等についてモニタリングを行います。また、指揮・監督の責任も担い、サステナビリティへの取り組みがサプライチェーンを含めて適切に進められているかを確認します。

このように、取締役会並びにサステナビリティ推進委員会がそれぞれの役割分担を通じて、そしてそれらが有機的な連携を行うことで、サステナビリティ経営を着実に推進しています。

サステナビリティ推進体制
サステナビリティ推進体制

戦略

当社グループは、気候変動問題をリスク・機会の両面で捉えており、非常に重要な社会課題と認識しています。そして、移行リスクについては1.5℃以下シナリオ(※)、物理的リスクについては4.0℃シナリオ(※)を活用し、主に2030年代までを中心に、事業への影響度を勘案し、当社グループの全ての事業を対象にリスク・機会を検討・分析しました。以下に特定したリスクと機会を示します。

気候変動に関するリスクと機会
気候変動に関するリスクと機会
  • 1.5℃以下シナリオ
    2050年までに地球規模で温室効果ガス排出量ゼロを実現する規範的シナリオ。 政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook2023」の「NZE2050シナリオ」、平均気温等気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP1-1.9シナリオ」に原則として準拠。
  • 4.0℃シナリオ
    現時点で公表されている温室効果ガス削減に関する政策や目標の撤回を含めて、気候変動問題に対する有効な政策が実施されないシナリオ。 政策、エネルギー・産業構造、資源価格等は、IEA「World Energy Outlook2023」の「STEPSシナリオ」、平均気温等気候変動に関する想定は「IPCC第6次評価報告書」の「SSP5-8.5シナリオ」に原則として準拠。


また、当社グループは、2024年6月に移行リスクの財務的なインパクトの算出を完了しました。以下にその算出結果を示します。

なお、物理的リスクについては現在も精査中です。以下にその現状を示します。

<移行リスク>

  • 炭素価格上昇のリスク
    IEA 「World Energy Outlook 2023」のNZEシナリオでは、2030年の炭素価格が140ドル/t-CO2と予想されています。後述のとおり、当社グループの2030年度の直接排出(Scope 1)および間接排出(Scope 2)の排出量目標11,047 t-CO2に対する潜在的な炭素税負担は、1,546千ドルと試算されます。為替レートを1ドル145円(2023年度平均値)と想定すると、この炭素税負担は224百万円(2023年度の売上高に占める割合は0.2%)となります。ただし、実際の炭素税は、温室効果ガス排出量全体に一律に課されるのではなく、業界や企業の特性に応じて設定される可能性があるため、この試算額は上限と考えられます。当社グループでは、さらなる温室効果ガス排出量削減に取り組むことで、移行リスクの低減を目指します。

<物理的リスク>

  • 浸水被害のリスク
    近年、日本国内では洪水や水害などによる浸水被害が甚大な経済損失を引き起こしており、これらは主要な物理的リスクとして認識されています。気候変動の影響により、浸水被害のリスクがさらに増大すると予測されており、企業の事業継続性を確保する観点からも浸水被害のリスクを検討することが重要です。さらに、日本は地震活動が活発な国であり、地震による津波による浸水被害についても考慮する必要があると考えています。
    浸水被害のリスク検討の取り組みとして、国土交通省の「TCFD提言における物理的リスク評価の手引き」を参考にし、各自治体のハザードマップや浸水ナビを活用して、浸水被害が大きいと考えられる主要事業拠点を特定しています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)のRCP8.5シナリオ(4℃上昇に相当)を適用し、2030年度および2050年度の浸水被害による資産への影響及び操業停止による売上高の減少などを精査しています。

リスク管理

サステナビリティ推進委員会は、当社グループ各社の取締役や経営幹部に対して意識調査を実施し、気候変動を含む幅広いサステナビリティ課題に対して高い関心を持っていることを確認するとともに、重要なリスクや機会を網羅的に抽出します。さらに、外部専門家の助言を活用し、専門知識に基づいた重要なリスクや機会の特定を行っています。

特定されたリスクや機会は、取締役会に報告され、審議・決定の対象となります。取締役会の関与により、組織全体のリスク管理の透明性と責任を確保しています。さらに、取締役会はリスクや機会への対応状況等のモニタリングを行い、適切な指揮・監督を行っています。

以上のようなサイクルを回すことで、変化する状況の中での新たなリスク要因や事業機会に対応するための努力を継続的に行っています。

指標と目標

当社グループは、気候変動に関するリスク・機会を管理するための指標として、環境負荷に関する重要な要素である温室効果ガス排出量を考えています。また、気候変動に対する取り組みを推進し、環境への影響を最小限に抑えるため、当社グループによる温室効果ガス排出量の削減に加えて、サプライチェーン全体の温室効果ガス排出量の削減に向けた取り組みも重要であると考えています。

  • Scope 1 ・2 排出量
    GHGプロトコルの基準に基づき、2022年度を基準年度として、当社および連結子会社8社の直接排出(Scope 1)と間接排出(Scope 2)の排出量を算定しました。これにより、当社および連結子会社8社は使用電力をCO2排出量削減プランに切り替えるなど、環境負荷の低減に向けた取り組みを推進しています。そして、2024年5月、当社グループは温室効果ガス排出量削減目標として、2050年度までに実質ゼロ、2030年度までに2022年度比47%削減(内訳は、航空2社合計で4%削減、その他7社合計で70%削減)を設定しました。
  • Scope 3 排出量
    GHGプロトコルの基準に基づき、2023年度のサプライチェーンを含む間接排出(Scope3)についても算定を行いました。今後、Scope3においても、2023年度を基準年とする温室効果ガス排出量削減目標を設定する予定です。
温室効果ガス排出量の実績と目標
温室効果ガス排出量の実績と目標
  • (注)2023年度、当社はScope 1・ 2の排出量算出の精緻化に向けた取り組みを行い、その結果を反映して2023年度の排出量を新たに算出しました。また、2022年度のScope 1についても、精緻化の取り組みに基づき排出量をより適正な数値に変更しました。

このように、当社グループでは、サステナビリティ推進委員会が中心となって、GHGプロトコルの基準に基づいた温室効果ガス排出量の算定と、中長期的な温室効果ガス排出量削減目標の設定とその達成のための取組みを推進し、気候変動への対応を引き続き行っていきます。

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