テレバリスタプロジェクトの始動とLIVES LIVEへの協賛
川田テクノロジーズは、株式会社オリィ研究所と「テレバリスタ」プロジェクトを始動するとともに「LIVES LIVE」に協賛しました。
テレバリスタプロジェクトとは?
川田テクノロジーズとオリィ研究所は、難病や重度障害などによる外出困難者でも、遠隔操作により手先を使った接客業が可能となる分身ロボットを開発する「テレバリスタ(Tele-Barista)プロジェクト」を発表しました。
オリィ研究所が開発・販売する分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」と、川田テクノロジーズのグループ企業であるカワダロボティクス株式会社が開発・販売している協働ロボット「NEXTAGE(ネクステージ)」を組み合わせることで、遠隔地からでも、バリスタのような接客と手先を使った作業が可能なロボットを開発するプロジェクトです。
なぜ、バリスタ?
以前はバリスタとして働いていたOriHimeパイロット(遠隔操作者)の「もう一度、お客様の好みに合わせてコーヒーを淹れたい」という希望を叶えるためです。
オリィ研究所では2018年より「分身ロボットカフェ」を主催する等、外出困難でもOriHimeを使っての接客業などを可能にしてきましたが、どうしてもこれまでできなかったのが手作業。そこで、「NEXTAGE」に白羽の矢が立ちました。お客様とのコミュニケーションはこれまで通り「OriHime」を通して行い、実際にコーヒーを淹れるなどの手作業は「NEXTAGE」が受け持つことで、バリスタのテレワークを実現しようとするプロジェクトが始まったのです。もし、OriHimeパイロットの方が茶道の先生だったら、NEXTAGEは今ごろお茶を点てていたかもしれません。それだけ「この人の夢を実現させたい」という、いたってシンプルな動機がプロジェクトの原動力になっていることがおわかりいただけるかと思います。
LIVES LIVE 2020
本プロジェクトの第一段階として、カプセル式エスプレッソマシンを使ってコーヒーを淹れる一連の動作が、9月13日(日)にWeb配信で実施された「LIVES LIVE 2020」で披露されました。
「LIVES LIVE 2020」は、ボランティア団体であるNPO法人「Hands On Tokyo(ハンズオン東京)」が、障がい者の「はたらく・たべる・わらう」をテーマに活動する「LIVESプロジェクト」の一環で、川田テクノロジーズとして協賛するほか、社長の川田がTechnologyプロジェクトリーダーとして参画しています。
このイベントで「テレバリスタ」が多くの方々にコーヒーをお出しする予定でしたが、コロナ禍の影響でWeb配信となり、残念ながら動画でのご紹介となりました。
テレバリスタ デモンストレーション
元バリスタのOriHimeパイロット2名「みかちゃん」と「さえちゃん」の接客ぶりや、NEXTAGEによる、人間以上に丁寧な動作といったみどころをどうぞご覧ください。
デモンストレーションは、各メディアに向けての取材会でも披露されました。肩の上に乗った「みかちゃん」がNEXTAGEに操作指示を出しています。その間、「さえちゃん」が一連の動作を見守りながら説明してくれています。
自分で自分を介護する時代に
オリィ研究所の代表 吉藤氏は、「今回は、第一弾としてカプセル式エスプレッソマシンを使用しましたが、ゆくゆくは豆を挽いたりドリップしたりといった作業も可能になるのでは」と話します。
「8年位前から"分身ロボット"を使えば、自分で自分の介護をする社会がやがて訪れると主張し続けてきましたが、当初は全く信じてもらえませんでした。しかし、今回のテレバリスタプロジェクトをきっかけに、作業範囲のさらなる拡張がイメージできてくれば、途端に現実味を帯びてきます。病気に関係なく、身体が動かなくなることは誰にも起こり得ることで、そうした将来を前向きに感じられるようにするのが真の目標です。」
分身ロボットカフェをはじめとするオリィ研究所の取組みの意義は、それ自体が就業機会となることよりも、こうした活動を通して自信をつけることで、仲間たちが諦めずに次のチャレンジの扉を開く、そうした環境を創り出すことにあり、実際にそういった事例が増えていることを紹介してくださいました。
大切なのはその人らしい「おもてなし」 "協働ロボット"の新たな局面を実感
当社社長の川田は、「あくまでも産業用ロボットだったNEXTAGEに、今回のコラボレーションで新たな可能性を感じさせてくれました。"人と一緒に働ける協働ロボット"というコンセプトを別の視点で実現したと言えるのではないでしょうか。オリィ研究所の着眼点は、好みの味をAIで計算したり、単においしいコーヒーを入れる機械を作りたいのではなく、OriHimeを介して"人"がその能力を拡張していくという点にあり、その取組みに大いに賛同しています。たとえば人が眼鏡をかけるのと同じように自然な形で、OriHimeやNEXTAGEが人間のできることを増やしていけば、高齢者による技術伝承なども可能になり、そこで働ける人が増えていきます。ロボットと人の新しい関係の進化にワクワクしています。」と熱く語りました。
テレバリスタ"NEXTAGE"プロジェクト メンバー紹介
ここで、今回のテレバリスタプロジェクトの、主に「NEXTAGE」側の開発に携わった川田テクノロジーズおよびカワダロボティクスのメンバーをコメント付きでご紹介します。
【プロジェクトリーダー】川田 (KTIグループ経営戦略室長)
LIVES LIVEでのデモは、開発チームの想いがたくさん詰まった第一歩となりました。
ワンチームとなって推進している今回のプロジェクト。メンバーからのコメントの前に、私から一言紹介します。
星野主幹・・・技術陣のまとめ役。記者発表の時に感動して涙を浮かべていたのを知っています。
立山主幹・・・ソフトウェアの鬼。フレンチプレス機を購入し、コーヒーの淹れ方にこだわり始めています。
寺崎主任・・・ティーチングマスター。バリスタの研究に余念なし。最近は各所の某カフェに出没しているとか。
大谷君・・・期待の新人。笑顔に皆が癒されました。取材会に、散髪をして一人キメて来たのはここだけの話。
【プロジェクトマネージャー】星野 (KTI主幹)
このチームは、まさに適材適所というチームメンバーになっており、それぞれが自主的にどんどん動いていくようなとてもいい雰囲気の中、メンバーのみなさんにたくさん助けられながら、こうして形にすることができました。
今回、実際のユーザとなるパイロットの方々の貴重な生の声を聞き、何が一番求められているのかを感じ、それをできる部分から形にするところに一番やりがいを感じました。そうしてできたロボットシステムを、実際にパイロットの方が使って喜んでくださったのをみて、本当にうれしかったです。
我々だけでなく、オリィ研究所の方々、パイロットの方々と一緒に、発表の直前ギリギリまで調整をしてみんなで仕上げたので、このチームの結束も強くなったと思います。
今後も、ユーザの生の声を聞かせていただきながら、誰かに喜んでもらえて、そして、将来のよりよい社会を感じられるようなものを形にしていきたいと思います。
【通信ソフトウェア開発担当】立山 (KTI主幹)
テレバリスタプロジェクトでは、NEXTAGEの遠隔操作対応ソフトウェア開発を担当しています。
今回の遠隔操作者(元バリスタ)は愛知県に居て、300km以上離れたNEXTAGEを操作しました。光速でも片道1ミリ秒かかってしまう距離。マン・イン・ザ・ループの機械システムを扱う技術者としては、感慨深い出来事でした。
NEXTAGEは、15軸の関節を持ち、全体で最大1.3kW程度の出力を持つ仕様のロボットです。人(カフェの客)に近い場所で動作するNEXTAGEを、人(遠隔地バリスタ)が操作するというシステムは、
1) 人に危害が及ばないようにする
2) ネットワーク攻撃を考慮に入れる
という点を重視して設計・実装しました。
1)に関しては、操作者は、あらかじめ安全性が確認されたティーチング済み動作を選択するようにしたことと、遠隔操作プラグインをインストールしたNEXTAGEを起動しても、NEXTAGEから遠隔操作システムへ明示的に接続しない限りは遠隔操作されないようにした事で対処しました。
また、2)に関しても、世界的に使用実績豊富なフレームワークを使用し、通信を盗聴されてもシステムに侵入できないよう設計したことで対処しました。
各種安全性を確保しつつ、遠隔地に居る操作者が「自分がサービスを提供している」という感覚を持つことができるシステムを、どこまで実現できるか――。挑戦は始まったばかりです。
【NEXTAGEアドバイザー】寺﨑 (KRC主任)
テレバリスタプロジェクトにはNEXTAGEのアドバイザーとして参画しています。本プロジェクトはNEXTAGEがオリィ研究所様のOriHimeと連携して、難病や重度障害などによる外出困難者でも、遠隔操作により作業を伴う接客業を可能にしようというテーマです。
今回はバリスタの作業を行いましたが、元々、NEXTAGEは産業製品の製造向けに開発され、人が遠隔操作する活用例はありませんでした。製造作業は慣れているものの、『接客』は未知の要素でした。うまく遠隔操作する人に対応していただいています。
"人"の拡張としてロボットを活用することで、ロボットの抱えるコミュニケーションの問題の解消と、外出困難者の社会参画という相乗効果は素晴らしい点だと感じます。
今後も、バリスタに限らずNEXTAGEの適用シーンが拡張されていくのが楽しみです。
【NEXTAGEデモ設計製作担当】大谷 (KRC)
新入社員の私はティーチング担当として、このデモの作成に関わりました。NEXTAGEは多くの場合、工場に導入され、効率を追求した周辺装置と組み合わせて運用されます。しかし、このデモは人がOriHimeとNEXTAGEを介してバリスタをするというコンセプトであり、全体の雰囲気を守るため、できる限りNEXTAGEの周囲に市販の道具を使うなどの制約が多くありました。
特にトレイを机に置く動作で音が出る問題がなかなか解決せず、試行錯誤の結果、あえて人がしないような両手を使う動作で解決しました。しかし実際にデモを見た方には「丁寧に作業しているように見える」と好評をいただき、ユーザの評価を聞いてみるものだと改めて実感しました。学ぶことの多い初仕事になりました。
今後、本プロジェクトは色々と進化していく予定なのでご期待ください!
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